ロレックス夜光塗料の変遷|ラジウム・トリチウム・ルミノバ・クロマライトを徹底解説
ロレックスのツールウォッチは、暗所での視認性を追求しながら進化してきました。
その歩みは夜光塗料の変遷と共にあり、
ラジウム → トリチウム → ルミノバ → クロマライト
へと世代交代を重ねることで、明るさ・持続時間・安全性が最適化されてきたのです。
例えば、ヴィンテージ期のラジウムは常時発光する実用性を持ちながらも放射性リスクがあり、
トリチウムはより安全に改良されつつも今では光を失い、
ルミノバ以降は非放射性かつ高性能な蓄光材として安心して使えるようになりました。
現在のクロマライトは鮮やかなブルーの発光が特徴で、現行ロレックスを象徴する要素になっています。
こうした変遷は単なる視認性の進化にとどまらず、コレクターにとっては価値を見極める手がかりでもあります。
本記事では各夜光塗料の仕組みと特徴を整理し、ヴィンテージから現行に至るまでの魅力を解説します。
概要
ヴィンテージ期のロレックスで用いられた自発光夜光。
Ra-226(ラジウム)が放つ放射線で硫化亜鉛(ZnS)などの蛍光体を励起し、当時は暗所でも常時発光が得られました。
ただし現在残る個体の多くは、蛍光体が経年劣化しており実用的に発光しません(放射線は出続けても、光らせる蛍光体が機能していないため)。
当時の特徴と現在の実態
当時の特徴
✔ 蓄光不要で常時発光し、夜間やツール用途に最適だった。
現在の実態
✘ ラジウム夜光は現在ほぼ光りません。
✘ ラジウム自体は非常に長い寿命を持つため、理論上はごく微量の放射線を今も放っていますが、
実用上は外部に影響を及ぼすほどではありません。
✘ ただし削ったり粉を吸い込まないなど、取り扱い時には基本的な注意が必要です。
見分け方のヒント
・夜光部の焼け(クリーム〜濃いアーモンド色)が特徴。
・針やインデックスの金属部に「ラジウムバーン」(変色跡)が出る個体も。
・ダイヤル表記は時期により異なるが、「SWISS」単記などが典型例とされることが多い。
・専門機器(ガイガーカウンター)で反応を示す場合がある。
コレクター視点
ラジウム夜光はヴィンテージ市場で特別な存在です。
光らないことが普通ですが、焼けやラジウムバーンなど経年変化そのものが価値とされています。
安全性の問題から安易な再夜光は避けられ、当時の夜光が残っているかどうかが評価に直結します。
ラジウムが残っているだけで「オリジナル性が高い」と見なされ、プレミアがつくこともあります。
取り扱いの注意
ヴィンテージのラジウム夜光は削らない・剥がさない・粉を吸入しないが原則。開封・補修は信頼できる工房に依頼しましょう。
ブラックライト照射時の様子
ラジウム夜光は通常時はほとんど光らないものの、ブラックライト(紫外線)を当てると蛍光体が一時的に反応し、
当時の夜光塗料が残っていることを確認できます。
ただし実用的な視認性は得られませんのでご注意ください。
- 現存ラジウム夜光は基本的に光らない点を前提に、実用性よりも保存・安全性の観点を優先。
- 夜光の焼け方やダメージ痕は個体の履歴を物語る一方、実使用時は密閉・清掃状態にも配慮を。
- 整備・再夜光は価値・安全性・オリジナリティのバランスを専門家と要相談。
概要
1960年代前半、放射性リスクの高いラジウムに代わり、より安全性が高いとされた
トリチウム(³H)がロレックスを含む多くの時計で採用されました。
トリチウムは弱いβ線を放出し、夜光塗料内の蛍光体を励起して光らせます。
当時の特徴と現在の実態
当時の特徴
✔ ラジウムに代わり放射線量が少なく比較的安全。
✔ 暗所でも自発光し、実用性を確保できた。
現在の実態
✘ トリチウムの半減期は約12年のため、製造から20〜30年以上経った個体はほぼ発光を失っている。
✘ ブラックライトを当てると青白くぼやけた光や粒子感が確認できるが、消灯後は光らない。
✘ コレクション市場では焼けや色味の経年変化が価値を左右する。
見分け方のヒント
・ダイヤル6時位置の表記が「T SWISS T」「SWISS – T <25」など、Tを含むのが典型。
・夜光は経年でクリーム色やベージュ色に変化することが多い。
・現存個体では暗所での光はほぼ確認できないが、ブラックライトに反応して一瞬蛍光を放つ場合がある。
コレクター視点
トリチウム夜光はヴィンテージ〜ネオヴィンテージの象徴です。
すでに発光は失われていますが、クリーム色やベージュへの経年変化が「トリチウム焼け」として好まれています。
ダイヤルと針の夜光が揃ってオリジナルであれば高評価となり、ブラックライトでのプツプツ反応も真贋判定の一助になります。
逆に後年ルミノバに交換されていると「惜しい」と評価が下がることもあります。
その後の経過と現在の評価
1990年代後半までトリチウムは主力でしたが、ルミノバ(非放射性蓄光材)の登場により完全に置き換えられました。
そのため現在では、トリチウム夜光のロレックスはヴィンテージ/ネオヴィンテージを象徴する特徴として、コレクターに高く評価されています。
ブラックライト照射時の様子
現存するトリチウム夜光は通常は光りません。
しかしブラックライトを当てると全体が青くぼやけて光り、インデックスや針の夜光部分に
粒子状のプツプツとした反応が確認できます。
ブラックライトを消すとすぐに発光は消え、蓄光のように残光することはありません。
この特有の反応はトリチウム夜光を見分ける大きな手がかりであり、
ヴィンテージロレックスの真贋判断に活用されています。
- ブラックライトを当てると青くぼやけた発光とプツプツした粒子が確認できる。消灯後は光らないのが特徴。
- これはトリチウム夜光特有の反応であり、ラジウムやルミノバとの大きな見分けポイント。
- 現存するトリチウム夜光は日常的に光らないのが普通。光らないからといって劣化や偽物と断定しないこと。
- 経年によるクリーム〜ベージュの変化はヴィンテージらしい味わいとして評価される。
概要
1998年頃からロレックスを含むスイス時計界で採用されたのがルミノバです。
日本の根本特殊化学が開発した非放射性の蓄光材で、紫外線や可視光を蓄えて暗所で発光する仕組みを持ちます。
それまでのトリチウムに代わり、安全性と視認性の両立を実現した画期的な素材でした。
当時の特徴と現在の実態
当時の特徴
✔ 日本で開発された非放射性蓄光材で、安全性が高い。
✔ 光を蓄えて鮮やかなグリーン発光をし、残光も長い。
✔ 均一で粒子感のない発光が特徴。
現在の実態
✘ 発光性能は健在で、今でも実用に十分。
✘ 採用期間が長かったため希少性は低いが、ダイヤル・針が当時のまま揃っているかはコレクター評価に影響する。
✘ ブラックライト照射では鮮やかに緑発光し、消灯後も残光があるため、トリチウムとの差が明確。
見分け方のヒント
・ダイヤル6時位置の表記が「SWISS」単記(1998年前後)、あるいは「SWISS MADE」へと切り替わる。
※ ラジウム期にも「SWISS」単記が存在しましたが、こちらは1998年前後に限定的に見られるルミノバ採用の“復活SWISS”であり、文脈が異なります。
・ブラックライトを当てると鮮やかな緑に強く光り、消灯後も残光が続くのが特徴。
・トリチウムと違ってプツプツした粒子感はなく、均一に発光する。
コレクター視点
ルミノバは1998年以降、クロマライト登場まで長期間にわたり標準的に採用された夜光です。
そのため「過渡期の希少性」といった要素はなく、むしろ安定した品質と安全性で知られています。
コレクターの間ではルミノバそのものが珍重されるわけではありませんが、ダイヤル・針がオリジナルのまま揃っているかは評価のポイントとなります。
また、ルミノバは均一に鮮やかに光るため実用性が高く、日常使いしやすいヴィンテージ〜ネオヴィンテージとして人気を支えています。
ブラックライト照射時の様子
ブラックライトを当てるとインデックスと針全体が鮮やかな緑色に均一に光り、
照射を止めてもしばらく残光が続くのがルミノバの特徴です。
粒子感が見えるトリチウムと異なり、なめらかで均一な発光をするため見分けやすいです。
- 「SWISS」単記=ルミノバ初期という認識はコレクターの基本知識。
- ブラックライト下では鮮やかに緑発光し残光もあるので、トリチウムとの違いが一目瞭然。
- ルミノバは使用期間が短く、過渡期の希少性がコレクション価値を高める。
概要
2008年のディープシー・シードゥエラーに初採用されたのがクロマライトです。
ルミノバをベースにロレックスが改良した独自の蓄光塗料で、特徴的なブルー発光をします。
視認性と持続時間に優れ、暗所での判読性をさらに高めた現行世代の夜光といえます。
✔ 2008年に登場したロレックス独自の蓄光材。
✔ 最大の特徴はブルー発光で、暗所でのコントラストに優れる。
✔ 残光時間が長く、ルミノバ以上の夜間視認性を実現。
✔ 非放射性で安全性・耐久性ともに現行最高水準。
✔ ブラックライト照射では鮮やかなブルー発光を確認でき、消灯後も長時間光が持続する。
見分け方のヒント
・ダイヤル6時位置の表記は「SWISS MADE」。
・ブラックライトを当てると鮮やかなブルーに均一発光し、消灯後も長く残光する。
・ルミノバの緑光と見比べると一目で違いが分かる。
コレクター視点
クロマライトは現行ロレックスを象徴する夜光であり、
「ブルーに光るかどうか」で年代を瞬時に識別できるのが最大の特徴です。
ルミノバ期との違いは、コレクターにとってモデルの切り替わりを見極める重要ポイントとなっています。
また現行ユーザーにとっては、最も安心して使える実用的な夜光として高く評価されています。
ブラックライト照射時の様子
ブラックライトを当てるとインデックスと針が鮮やかなブルーに光り、
照射を止めても長時間残光が続きます。
ルミノバのグリーン発光と比較すれば、クロマライト独特のブルーがすぐに分かります。
- ブルー発光=クロマライトと覚えれば、現行かルミノバ期かの判別は一目瞭然。
- ブラックライト下での発光色の違いは、針やインデックス交換の有無を見抜く手がかりにもなる。
- 現行世代では最も実用的で長寿命な夜光塗料として安心感が高い。
ロレックスの夜光塗料は、ラジウム → トリチウム → ルミノバ → クロマライトと進化してきました。
それぞれの素材は「当時の技術的最適解」であり、今となっては歴史を物語る痕跡となっています。
- ラジウム … 常時発光が可能だったが、現在は光らず。焼けやラジウムバーンがヴィンテージ価値を高める。
- トリチウム … 光は失われても、クリーム色やベージュへの経年変化が味わいとして評価される。
- ルミノバ … 非放射性で安心、今でも十分に実用的。安心して使えるネオヴィンテージを象徴。
- クロマライト … 現行ロレックスの証。ブルー発光が特徴で、実用性と現代性を兼ね備える。
コレクターにとっては夜光の種類=年代やオリジナル性を見極める鍵であり、
初心者にとっては「光り方」「色」「表記」をチェックするだけで時計の時代背景が分かる楽しいポイントです。
つまり夜光塗料は、単なる視認性の道具ではなくロレックスの歴史と価値を映すディテールなのです。































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